
今年から本格的に始めたトレイルランニング。
シューズを買って、ザックを買って、ウェアを揃えて。
休みの日になるとトレラン用品を調べながら、「山を走ったら楽しそうだな」と想像していた。
そして今回、ノルディスク山梨のトレラン大会に参加してきた。
距離は25km。
初めての本格的なトレラン大会。

スタート前に不安はあったかと聞かれたら、ほとんどなかった。
むしろ、
「ワクワクしかなかった。」
これから25km、山の中を走って遊べる。
そんな感覚だった。
ところが、スタートして数km。
いきなり現実を見せられた。
3kmあたりから6kmあたりまで続く急登。
脚もキツい。
心肺も一気にキツくなる。
まだ序盤なのに、
「これ、このままゴールまでいけるのか?」
という不安が出てきた。
ロードなら、ある程度ペースを決めて走る。
でもトレランは、そもそも登りをどこまで走ればいいのかが分からない。
前半だから脚はある。
頑張れば走れてしまう。
でも、ここで頑張りすぎたら後半に脚が残らない気もする。
初めてなので、その加減が全く分からない。
そこで、とりあえずベテランっぽい人についていくことにした。
すると意外なことに気づいた。
「結構、歩く。」
「ここ、歩いていいんだ。」
ロードを走っていると、途中で歩くことには少し罪悪感がある。
でもトレランでは、急登になれば周りも普通に歩いている。
歩くことも含めてレースなんだと分かった。
これは自分にとって結構大きな発見だった。
ただ、一人になった時や自分が先頭になった時には、参考にする人がいない。
そこで心拍計を見るようにした。
自分の中では心拍160くらいを一つの目安にして、走る、歩くを切り替えてみた。
無理して走り続けるのではなく、地形と自分の体の状態を見ながら整えていく。
ロードでは時計を見て「1km何分」で走りを整えることが多い。
トレイルでは違った。
登りなのか、下りなのか。
脚は残っているのか。
心拍はどうなのか。
この先のコースはどうなっているのか。
状況を見ながら、自分の体と相談して走り方を変えていく。
同じ「走る」でも、ロードとは使っている感覚が全然違った。
そして今回、一番楽しかったのが下りだった。
これが想像していた以上に面白かった。
子供の頃、公園や林で鬼ごっこをしていた時の感覚に近い。
ただ速く走ればいいわけじゃない。
目の前の地形を見ながら、瞬間的に自分の走るルートを決めていく。
真っすぐ行くのか。
右側を使うのか。
左側を使うのか。
次にどこへ足を置くのか。
なるべくスピードをロスせず、自分の頭の中でイメージしたルートをトレースしていく。
前日は大雨だった。
その影響で、みんなが通る場所は落ち葉がなくなり、土や泥がむき出しになっていた。
場所によっては粘土のようになっていて、かなり滑る。
しかも下りでは、自分でも今まで出したことがないようなスピードが出る。
目の前の土がグリップするのか、滑るのか。
それを一瞬で判断しなければならない。
そこで自分は、コース脇に残っている落ち葉の積もった傾斜を使って走ってみた。
右の斜面から左の斜面へ。
バンク・トゥ・バンクのような感覚で、なるべくスピードを落とさずに駆け抜ける。
これが正しい走り方なのかは、まだ分からない(笑)。
でも、めちゃくちゃ楽しかった。
自分でルートを考えて、その通りに体を動かして、うまく抜け
られた時の気持ち良さ。
これって何かに似ているなと思った。
子供の頃の鬼ごっこだった。
相手から逃げながら、
「こっちを通った方が速い」
「ここを曲がれば追いつかれない」
と考えて、公園や林の中を全力で走り回っていた。
あの頃は「ランニング」なんて考えていなかった。
ただ、走って遊んでいた。
大人になって、またその感覚を味わうとは思わなかった。
もう一つ、ロードと違って面白かったのが、人との距離だった。
前の人を抜く時には声を掛ける。
抜かれる時にも声を掛ける。
急登になると、さっきまで前後を競っていた人と一緒に歩くこともある。
お互いゼーゼー言いながら、キツさを紛らわせるように雑談する。
名前も知らない。
今日初めて会った人。
でも同じ山を走って、同じ坂に苦しんでいるだけで、自然と会話が生まれる。
そしてゴールしたあと、
「あ、さっき一緒に走っていた人だ。」
と、また話す。
競争しているはずなのに、どこか一緒に山で遊んでいる感じがある。
この距離感もすごく良かった。
もちろん、あれだけ時間をかけて選んだ装備の答え合わせもできた。
シューズはメレル。
特に下りではグリップの良さをしっかり体感できた。
ザックはサロモン。
25km走っても特に不満なし。
ウェアはノースフェイス。
中でもランパンはかなり良かった。
休みの日にあれこれ調べていた時間も、ちゃんと意味があったらしい(笑)。
そしてゴール。
最初に出てきたのは、
「やった〜!」
という気持ちだった。
そしてもう一つ。
「出し切れた。」
25kmの中で、登りがあって、歩いて、走って、下って、人と話して、また走る。
単純にタイムだけでは表せない満足感があった。
大会が終わったあと、自分でも少し意外なことを思った。
「ロードよりトレランの方が楽しいかもしれない。」
もちろん、ロードが嫌になったわけではない。
今シーズンはフルマラソンで自分の目標タイムに挑戦する。
これはやり切りたい。
ロードでどこまで自分の走力を高められるのか。
そこには今もすごく興味がある。
でも、その挑戦が終わったら、もう少しトレイルの世界に入ってみたいと思うようになった。
次は30kmくらいだろうか。
もう少し長く山の中にいたい。
もっと下りを上手く走れるようになりたい。
登りでどこまで走って、どこで歩けばいいのかも経験を積みたい。
今回25km走ったことで、「トレランをやってみたい」から「トレランをもっとやりたい」に変わった。
タイムを追いかけるロードとは、また違う楽しさ。
地形を見て、自分の体と話をして、瞬間的にルートを決めて走る。
知らない人と声を掛け合いながら山を進む。
そして下りになったら、子供の頃みたいに思いきり駆け抜ける。
今回の大会を一言で表すなら、
「冒険&少年時代に戻れるかけっこ大会」
今のところ、これが一番しっくりくる。
50歳になって、また新しい遊びを見つけてしまった。

次はどこの山を走ろうか。
そんなことを考えている時間も、もう始まっている。

